Twitterで書いた二次創作SSを載せていくだけの場所。 夢も腐もある無法地帯。
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ピンと立った耳。しなやかに伸びる長い尾。そこに生えた、髪と同じ艶やかな色のふわふわの体毛。
己に起きた変化を目の当たりにして、黒羽は言葉を失っていた。
「ふふっ、くろ、ほんもののくろねこみたい」
この変化の元凶であるバベルは、ニコニコと満面の笑みを浮かべている。その手には大きめの手鏡があり、黒羽の姿をしっかりと映していた。
かつて朔空が用意したハロウィンの仮装を彷彿とさせるその姿は、どうみても黒猫だった。
「バベル、これは一体どうなって………」
「えっとね、みおくんが、バベルにくろまじゅつをおしえてくれたの。それでね、くろにつかってみた」
「黒魔術だと?」
あまり黒魔術などの非現実的な事を信じる方ではなかった黒羽は怪訝そうに眉をひそめる。だが、今自分に起きてきる変化はどう頑張っても説明がつけられそうになくて、信じる他はなかった。
試しに頭に生えた耳に触れてみると、きちんと感覚がある。しかも血が通っているのか、温もりも伝わってきた。
「バベルもさわっていい?」
黒羽が触れていないほうの耳にバベルの手が伸びる。自分で触るのと、他人に触れられるのでは感覚が全く違うらしく、押し寄せてくるこそばゆさに、黒羽は思わず笑いを溢しそうになった。
「バベル、あんまり触るな。くすぐったい」
「あ、ごめん。つぎはきをつけるね」
触ること自体は止めてはくれないようだ。さっきよりも優しく触れてくるバベルに、黒羽はやれやれと肩を竦めた。
とても楽しそうなバベルを見ていると、どうも甘やかせてしまう。
「そういえば朔空はどうした?俺よりもやつの方がこういうことにはノリがいいだろう?」
「さくにはもうやった」
「はっ?」
「さくはおおかみさんだった。それで、しっぽがふわふわだったからさわらせてもらおうとしたら、ぷろでゅーさーにみせてくるって、バベルをおいてはしっていっちゃった」
「そ、そうか……」
黒羽を撫でる手は止めずに、バベルは頬を膨らませる。余程、朔空の尻尾に触れたかったのだろう。
プロデューサーのところに一目散に走っていく朔空の姿が容易に想像できて、黒羽は苦笑した。
「くろはにげないでいてくれるから、うれしい」
「まぁ、この姿を大勢に晒すのも嫌だからな」
「そっか。じゃあ、バベルにひとりじめさせて」
ずっと耳を触っていた手が尾に移動する。尾は更に敏感になっているようで、触られたら直後に、毛がぶわりと逆立った。ゾワゾワとした感覚が尾の付け根から腰に伝わり、背筋が震える。
「すまん、そこはあまり触らないでくれ」
「えー」
「えー、じゃない!ものすごくくすぐったいんだ」
「……わかった」
素直に手を引いたバベルに、黒羽はほっと胸を撫で下ろした。あのまま触られ続けたらどうなっていたか。あまり想像したくはない。
「そういえば、この黒魔術とやらはどうやったら解けるんだ?」
「じかんがたてばもどるってみおくんはいってた。どれくらいかはわからないけど…」
「そうか」
あとどれくらいの時間をこの姿で過ごせばいいのか。それが分からないのは不安だったが、きちんと元に戻れると分かっただけでも黒羽には十分だった。
「ねぇ、くろ。バベル、もうひとつだけさわってみたいところがあるの」
「耳と尾以外にか?」
「うん」
他にはどこも変わりがないはずだ。体感的にそう思っていた黒羽は首を傾げる。
バベルは、そんな黒羽の頬に手を添えると、指で唇をゆっくりとなぞった。
「おい、こんなところで何をしようと……むぐっ」
キスされる。そう思ったが、どうやら違ったらしい。黒羽が口を開いた途端に、長い指が口内に侵入し、彼の舌に触れた。
思わず口を閉じようとしたが、上手く力が入らない。その隙に新たな指の侵入を許してしまった。
「わー、くろのした、すごくざらざらしてる」
黒羽の舌の感触を楽しむように、バベルの指が絡み付く。撫でて、挟んで、時々爪で軽く引っ掻いて。懸命に逃げようとする舌を玩ぶ。
ビリビリと甘い痺れが頭に昇っていく。さらにクチュクチュと唾液をかき混ぜられる音が響いて、どうにかなってしまいそうだった。
「ぅっ、んっ……」
その感覚はさっきの尾に触れられた時とは非ではなくて、黒羽は自我を保つのに必死だった。
それから、どうにかしてバベルを止めようと、彼の手を叩いたり、自分から引き剥がそうとしてみたが、上手くはいかなかった。
少し鋭くなった爪を立ててみたが、服を貫通するまでには至らず、無駄な足掻きをする子猫同然だ。
「……っんんん!」
全身を突き抜けるような甘い衝撃に、意識がぶわりと浮き上がる。そのまま気を失ってしまえれば楽だったのだが、新たな刺激がそれを邪魔した。
「ぷっ、はぁ………」
黒羽が解放されたのは、黒魔術が解けた後だった。舌が普通の感触に戻ったことに気付いたバベルが、手を止めたのだ。
黒羽はその場に崩れ落ち、未だに残る甘い余韻に身を震わせる。舌はいまでもピリピリしていて、吐息に触れるだけでもさっきまでの痺れが沸き上がってきそうだ。
「くろ、だいじょうぶ?」
出来ればそっとしておいてほしい。そんな黒羽の願いが届くことはなく、バベルは彼の背中を優しく撫でる。それすらも追い討ちになっていることに気付かずに…。
黒羽は体を丸めるようにして踞り、再び心地よさが押し寄せてくるのを堪える。
「ねぇ、またこんど、くろにくろまじゅつをかけてもいい?」
全く悪びれた様子もなくとんでもないことを尋ねてくるバベルに、黒羽はゼェゼェと肩を上下させながら、粗い呼吸に言葉を乗せたのだった。