目の前にいる彼は本当にバベルさんなのだろうか。これまで見たことのない妖艶な雰囲気を纏っている彼に、私は恐怖すら抱いていた。
澄んだ水を連想される瞳は淀み、まるで霧がかかっているように濁っている。
「はぁ……ぁ…………きょうの、きみ、すごく、おいしそう…」
荒い呼吸を吐き出し、チラリと真っ赤に充血した舌が覗く。恍惚とした目は朧だが、その奥底にはギラリと鋭い怒りが潜んでいて、私を捉えて離そうとしない。
食われる。
そう直感で感じた。
「いただいま……す……」
「んんっ……」
乱暴なキスが落ちてきた。私の顔を包み込むバベルさんの手も、私の口内に侵入した舌も、互いの吐息すら咀嚼しようとする唇も。何もかもが熱かった。
「はっ……あ………んんっ………」
息継ぎすら赦されない。全てがバベルさんのペースに塗り替えられていく。
体温も、呼吸も、鼓動も、心地のよささえも。無理やり押し付けられて、植え付けられて、抵抗する意思を根刮ぎ奪われる。
次第に私からもバベルさんを求めて、無意識に唇が動いていた。
怖い。それなのに、溺れたい。そんな矛盾した感情が拮抗して頭がクラクラする。
「ふふっ、きみもバベルをほしがってくれるの?うれしいなぁ」
バベルさんの手が、私の頬から胸にゆっくりと移動する。その指先はブラウスのボタンにかけられて、思いきり引き下ろされた。
プチプチッと糸の切れる音がする。同時に冷たい外気が肌に触れて、体が震えた。
「あぁ、きみのからだ…すごく、きれい」
キスに満足した唇が、私の体を中を食んでいく。時々強く吸い付かれ、その度に甘い痺れに腰が浮き上がりそうだった。
獰猛に私を貪る雄々しい姿に、彼も男なのだと思い知らされる。普段は隠れているだけで、彼はこんなにも暴食で、強欲な、一人の男なのだ、と。
その証拠に、彼のソコはいつの間にかしっかりとその存在を主張を始めている。私に触れる度に、どんどん、大きくなっているのが、服の上からでも分かった。
「ねぇ、おねがいがあるの」
はぁ、はぁ、と全身で呼吸しながら、バベルさんは唸る。
「からだが、すごくあついの。どんどん、あつくなっていく。あたまが、ふわふわして、くらくらして、おかしくなっていくの。
でも、すごくきもちがいい。きみにふれると、それがつよくなる。だからね、きみにもふれてほしいの」
腹に、バベルさんのソコをグリグリと押し付けられた。やはり硬くて、とても熱い。
圧迫されるだけでも辛いのか、バベルさんは顔を歪ませていた。
「ここ、さわって」
可愛らしくお願いしているけれど、私に拒否権はないらしい。腕を掴まれ、引き寄せられる。男の人のソコを触ったことなんてないから、恥ずかしくて堪らなかったけど、そんなことお構い無く、押し当てられた。
「っぁ、あっ………」
艶やかな甘ったるい声がバベルさんから溢れる。もっと刺激がほしいのか、ゆるゆると腰が揺れていた。
完全に快楽にとり憑かれてしまったバベルさんはとても大人びていて、怖いはずなのに、私はどうしても目を離せずにした。