忍者ブログ

SS置き場

Twitterで書いた二次創作SSを載せていくだけの場所。 夢も腐もある無法地帯。

バベル君の役作りに付きあう夢SS

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

バベル君の役作りに付きあう夢SS

「やくづくりのてつだいをしてほしい」

バベルにそう頼まれて、内容も何も分からないままにレッスン室へとやって来たのだが、一体これはどういうことなのだろうか。

部屋に入るなり手を引かれ、そのまま視界は反転して。体は支えられていたみたいで、背中を強く打ち付けるようなことはなかったけれど、精神的な衝撃は大きかった。

彼にしては酷く強引だと驚いたが、自分を見下ろすその面立ちで考えを改めた。

いつもの柔らかい笑顔の彼はそこにはいなくて、所謂ライブモードの彼が含みのある笑みを浮かべていたからだ。しかも綺麗な淡蒼色の瞳の奥にギラついた光を感じて、背筋がゾクリと粟立った。

「えっと、これは一体……

ふと、当初の目的を思い出す。これは役作りに必要なことなのだろうか。

何となく嫌な予感がして、恐る恐る彼を見詰めていると、とんでもない物が視界に飛び込んできた。

鞭だ。

しかもオモチャのような簡素な作りの物ではない。艶やかな黒革の本格的なもの。どう考えても自分に使う為のもの。そう理解した途端に血の気が引いた。

「ふっ、一体何を想像した?」

一方でバベルは目尻を歪めて笑っていた。演技なのか、本心なのか。全く見抜けない。

それが無性に怖くてガタガタと体が震えだす。そんな私に気付いたのか、そっと耳元で囁かれた。

「安心しろ、痛い事はしない」

とても甘い声色だ。いつもなら蕩けてしまっているだろう。でも、この日はそれよりも恐怖が勝ってしまっていた。

怖い、怖い、怖い。

涙が自然と滲み始め、彼の姿をぼやかしていく。思考が恐怖に満たされていく。バベルは何か言っているみたいだったが、全く頭に入っては来なかった。頭の中が一気にこんがらがっていく。

しかし、バシンッと空を切り裂くような音に嫌でも我に返らされた。

「よそ見をするな。俺を見ていろ」

顔のすぐ真横の床が鞭打たれた。まるで悲鳴みたいなその音に、体が竦み上がる。同時に、今の彼の機嫌を損ねてはいけないと本能的に理解した。

喉の奥から溢れ方な嗚咽を堪え、懸命に彼を見詰める。そのまま緊迫した時間が刻々と流れ、ふと彼の手が伸びてきた。

次は何をされるのか。叩かれるのだろうか。痛い事はしないとは言っていたが、心は穏やかではなかった。

彼の指先が目元に触れる。涙が掬いあげられ、彼の顔がハッキリと見えた。鋭く細められた双眼が私を突き刺す。

「そう怯えるな。そんな顔をされると虐めたくなるだろう?」

クツクツと喉を鳴らして笑う彼はただただ楽しそうだ。たまに鞭をちらつかせながら、彼の指が目から頬、顎にゆっくりと滑り落ちていく。

「どうした、抵抗しないのか?少しくらい噛みついてもいいんだが?」

そんなこと出来るわけがない。そう視線で訴えかけると、彼の目がスッと細められた。

「調教する楽しみがないのは残念だが、従順なのは嫌いじゃない。いい子には褒美をやらなければなぁ」

唇のラインを親指でなぞられる。それだけでも触れられた箇所がビリビリと痺れた。

彼の顔が近付く。目を閉じてしまいたいが、怒らせるのが怖くて出来ない。

恐怖のせいか、羞恥のせいか。心臓が破裂してしまいそうなくらいに暴れている。痛くて苦しい。また涙が溢れてきそうだ。

そんな私にお構いなしに、互いの吐息が混ざり合うくらいに口先が接近して………

「どう、バベルえんぎ、こわかった?」

「えっ……

さっきまでとうってかわった辿々しい口調に、私は耳を疑った。

直後、ふわりと体が浮き上がる。背中に感じていた冷たさが啼くなって、代わりに人の温もりが広がっていく。

あまりにも急展開過ぎて、もう何が何だか分からないが、さっきまで全身にまとわりついていた緊張感はなくなっていた。

ぽかんとして固まっていると、もう一度涙を拭われた。次に見た彼は、いつもの優しい彼だ。私の唇を弄んでいた手はいつの間にか頭に移動していて、子供をあやすように何度も撫でられた。

ギャップといえばいいのか。急激な切り替えに思考が追い付かない。

何と声をかけたらいいのか。安心するべきなのか、怒るべきなのか、笑うべきなのか。自分の気持ちすら分からない。

そんな私に、バベルはふわりと微笑みを讃えながら追い討ちをかけてきた。

「ねぇ、バベル、きみをちゃんとしはいできてた?」

無邪気に投げ掛けられた問いかけに底知れぬ闇を感じて、私は強張った笑いを浮かべながら頷くことしか出来なかった。
PR

コメント

プロフィール

HN:
雑音
性別:
非公開

P R