次のランスロがアラビアンな格好をするらしくて、奴隷として売られる一誠とそれを買う鷹通がぼんやりと浮かんだから、SSで書き殴った。
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奴隷に使う鞭は特別に作られていて、極力体に傷を残さずに痛みだけ与えるようになっている。そんなどうでもいい話をずっと昔に聞いたことがあった。
それが本当なのか、嘘なのか。確かめた事はなかった。
だが、俺の目の前で鞭打たれている男は全身に痛々しい傷を幾つも残していた。綺麗に焼けた肌に青アザや擦り傷、中には深く抉れた痕さえある。さぞや痛いことだろう。見ているこっちの方が顔をしかめたくなる悲惨な有様だ。
それなのに、この男は笑っていた。鞭打たれる瞬間は歯を食い縛って、目元を苦痛に歪めるが、すぐに挑発的に嗤っていた。
馬鹿なのかと思った。頭がイカれてしまったのではないか…と。
だが、彼の瞳は濁ってなどいなかった。どんな高級な宝石よりもずっと綺麗に輝くその瞳は、キラキラと強い輝きを放っていて、思わず目を奪われてしまいそうになる。
「おい、そこのお前」
ふと、男が口を開いた。さっきまで見とれていた目に真っ直ぐに見つめられ、俺はゴクリと片唾を飲み込んだ。
綺麗だと思った。傷だらけで、砂埃と汗に汚れて、粗末な布を纏っている男の筈なのに、強く惹かれてしまっていた。
男は俺の心を読み取ったのか、乾燥した唇で歪んだ弧を描く。そして、誘惑的な言葉を紡いだ。
「お前、俺を買わねぇか?」