朔空君がバベル君に~の続きみたいなもの。
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憤怒。憎悪。
そんな言葉が今の朔空には合っているだろう。決して踏み込んではならない領域に好奇心から足を踏み込んでしまったのだから、非は黒羽の方にある。だが、今の朔空の辛辣な眼差しは、今回の怒りだけでなく、これまで彼に抱いていた毒念も含まれていた。
「あの部屋、プロデューサーちゃん以外には誰にも見せたくないって言ったたけど、一番見せたくなかったのは黒なんだよねぇ」
うつ伏せになっていた黒羽の体を乱暴に仰向けにして、鳩尾に膝乗せてグリグリと押し付ける。大人一人分の体重をかけられて、その痛みに黒羽は顔を歪めた。
「痛いよね。でも安心してよ、仕事に支障が出ないようにするから」
全く心の籠っていない淡々とした声。そこに慈悲など微塵も感じることは出来なかった。
黒羽はただ黙って朔空を見上げる。弁解も、謝罪も、今の彼には不要だし求められてもいないのは分かりきっていたからだ。
少しは抵抗すると思っていた朔空は、面白くなさげに黒羽に馬乗りになる。そして、さっきまでバベルにしていたように、彼の体を擽り始めた。
初めはゆっくりと、優しく。どこが弱い箇所なのか探るように、じっくりと黒羽の表情を観察しながら、全身を汲まなく撫で回す。
「うっ……く…………」
黒羽は時々強く押しよせてくるこそばゆさに懸命に耐えようとしたが、身体的な反射はどうすることを出来ず、時々声を溢した。
最初こそまだ余裕があったがそれも長くは続かず、徐々に息が上がり始めていく。
「ちょっと、音を上げるのが早いんじゃないの?バベルはもうちょっと我慢できたけど?」
明らかに黒羽の弱い場所ばかりを狙いながら、朔空は棘のある言葉を吐き捨てる。その間も手を止めることはなく、黒羽はキュッと唇を噛んで涙を浮かべた目で朔空を睨んだ。
「何その目?そんな反抗的な態度取れると思ってるの?」
スルリと脇腹をまさぐりながら、朔空は一度体を浮かせ、さっきまで押し付けていた膝をもっと下に移動させた。ちょうど下腹部の下へ…。
流石に黒羽は焦りを感じて、朔空を見上げる。
「朔空、何をして……」
「黒が反抗的だから、うんと恥ずかしいことをさせてあげようと思って」
触れるか触れないか。そんな際どい場所に朔空は膝を擦り付ける。擽られるのとはまた違う感覚が合わさって、黒羽はゾワゾワと背筋を震わせた。
「ぅあっ………」
思わず震えた声が溢れた。そのか弱さに黒羽は顔を赤くし、朔空は嗤った。
「ははっ、随分可愛い声が出るね。いいよ、もっと鳴きなよ。せっかくだし、バベルにも聴かせてあげたら?」
「はっ、……ふざける、な……っう」
擽られ続けて不規則になる呼吸に加えて、無理やり押し付けられる快感に、黒羽はどうすることも出来なかった。声を押さえようにも、体は酸素を求めて口を閉ざすことは出来ない。
苦しい。痛い。熱い。それなのに、抗えない性的な心地の良さがそれらを誤魔化して、呑み込んでいくようだった。
「あっ………ぅ、はぁ………やめ………」
ビクリ、ビクリ、と腰が浮き上がる。酸欠と押し寄せてくる快感に、頭が白く染まりそうになる。
黒羽は横目でバベルの様子をうかがう。さっきまで放心していた彼は、まだぼんやりとしているようだった。
仲間である彼に、こんな屈辱的な姿を見せたくない。もちろん朔空にも、これ以上の醜態など晒したくはなかった。
だが、朔空は止めようとしない。それどころか、ニンマリと表情を歪めて彼の姿をしっかりと目に焼き付けていた。
「そのまま出したら、止めてあげてもいいけど?」
とんでもない提案を持ちかけてきた朔空に、黒羽は顔を引きつらせる。
「そんなこと、できる、わけ……ぅあっ」
「あっそ。じゃあ、ずっと可愛らしく鳴いてなよ」
無理だと悲鳴を上げる黒羽に、朔空は冷ややかな返事をそっけなく返す。そして、情けも容赦もなく、再び黒羽を蹂躙し始めたのだった。