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SS置き場

Twitterで書いた二次創作SSを載せていくだけの場所。 夢も腐もある無法地帯。

バベル君と桃ちゃんが花束を作るだけのSS

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バベル君と桃ちゃんが花束を作るだけのSS


フリージア、カーネーション、薔薇、カスミソウ……。鮮やかな赤を中心に、色とりどりの花がバベルを彩っていく。彼の手に納められたその花々からは優しくて甘い香りがふわりと舞っていた。
花束を作る。ただそれだけの事なのに、ドキドキと胸が高鳴って仕方がない。バベルは自分の鼓動に合わせて、無意識に鼻唄を囀ずっていた。
「バベルさん、お花選びは終わった?」
るんるんと、周りに陳列された色々な種類の花を見て回っていると、側の棚から桃助がひょっこりと顔を出した。彼もまた両手に幾つかの花を持っている。その種類も色も、バベルの選んでいるものとはかなり異なっていた。
そして、まだ乱雑にまとめられているバベルの花とは違い、桃助の両手に抱えられたそれは、綺麗にまとめられていた。
「ももちゃんは、おはな、えらびおわったんだね」
「うん!あとはラッピングしてもらうだけだよ」
自分の選んだ花を見ながら、桃助は幸せいっぱいな顔で頷く。手に持った花も加わって、いつもに増して可愛らしいその表情は、見ている側まで心を和やかにさせる、そんな魅力があった。
チューリップ、コスモス、マーガレット、カスミソウ、アイビー。
淡い色を中心とした花に、上手くアイビーの蔦が絡まりまとまっている。きっとブーケのような可愛い花束になるのだろう。
バベルは、桃助の選んだ花をジーと見下ろす。それから「んー」っと少しだけ間を置いて、ふわりと笑った。
「これはいっせいくんにおくるの?」
不意に投げ掛けられた問い掛けに、桃助は一瞬だけ目を見開いた。
「すごーい、よく分かったね!」
「ふふっ、ももちゃんのきもち、おはなからたくさんつたわってきた」
きっとたくさん考えて選んだのだろう。色、種類、そこに込められた想い。バベルにはそれらが感じ取れた。
そして、その気持ちが仲間の華房心や神楽坂ルナに向けられたものとは違う事も、真っ直ぐに轟一誠に向けられたものだという事もすぐに分かった。
「ねぇ、ももちゃん。あとひとつだけおはなをいれたいんだけど、どっちがいいかな?」
あともう一つだけ。その最後の一つが中々決まらずにいたバベルは、桃助に助言を求めた。きっと彼ならぴったりの花を決めてくれる。そう確信したからだ。
「どのお花で迷ってるの?」
「えっとね、これと、これ」
バベルはひまわりとペチュニアを指差した。
桃助は示された花とバベルの持つ花束とを真剣に交互に見比べながら、首を横に傾ける。
「これって、エヴァさんにあげるお花だよね
?」
「そうだよ、ももちゃん、だいせいかい!」
「やった!それなら、ペチュニアかな……って思うんだけど、バベルさんの花束はものすごく色が濃いから、これ以上お花は足さない方がいいかもしれないね」
原色に近い赤、黄、白。そこにひまわりやペチュニアの色は主張が強すぎる。
もっと淡い色にするか、既に選んでいる花を変えるかのどちらかになってくるが、それだと彼の想いをそのまま汲み取ることは出来なくなってしまうだろう。
桃助は悩む。そして、少し考えたあとでハッと閃いた。
「そうだ!バベルさんもアイビーを入れてみたら?優しい色の葉っぱだから、違和感と少なくてすむかもしれないよ」
花をいじるのではなくて、蔦植物や多肉植物を足した方がいいかもしれない。それに、アイビーなら彼の想いにも合うだろう。
そう思ったからこそ桃助は自信を持って勧めてみたのだが、バベルの反応はあまり芳しくはなかった。
「うーん……」
「どうしたの?蔦は嫌だった?」
「ちがうよ。とってもすてきなはなたばになるとおもう。でもね、あいびーはだめ。おにいちゃんにあげるはなたばにはあわない」
「…………そっか」
きっぱりと断ったバベルに、桃助はため息混じりにそう呟いた。
バベルがアイビーを拒んだ理由。きっとそれは、桃助がアイビーを選んだ理由と同じだ。
何故なら、その花言葉は………。
「バベルさんはストイックだね」
「そんなことない。バベルはとってもわがまま。でも、おにいちゃんをよくばったら、かなしむひとがいるからしないの。それにね、あげたいひとは、ほかにいるから」
ふと表情が優しくなったバベルに、桃助は思わず「あっ」と息を呑んだ。それが恋する者の顔なのだとすぐに分かった。
愛しげに緩められた彼の視線の先は、桃助の花束に向けられる。
「ももちゃんのはなたば、バベルだいすき。これをもらったいっせいくんはすごくしあわせだね。
バベルも、つぎはももちゃんみたいなはなたばをつくりたいな」
「バベルさんはその花束を誰にあげるの?」
桃助はおずおずと尋ねる。
一体彼は誰に想いを馳せているのだろう。エヴァに向ける純粋無垢な愛情とはまた違う、甘くて、苦しくて、どこまでも堕ちていってしまうような愛情を抱いているのは誰なのだろう。
そんな好奇心が桃助の中にふつふつと沸き起こっていく。
「しりたい?」
バベルの問い掛けに桃助はコクコクと頷いた。しかし、彼はゆっくりと唇に人差し指を沿えて悪戯めいて囁いのだった。
「んー、ひみつ?」



アイビーの花言葉は『永遠の愛』『結婚』『友情』。縁を結ぶ縁起のいい植物だ。
しかし、それだけではない。生命力の強いこの蔦は、時に結ぶだけではおさまらず、どこまでも成長していくのだ。それは止まらない愛情と変わらない。
『貴方から死んでも離れない』
そんな狂気にも近い程の想い。ほどけないくらいに絡まり、相手を呑み込んでいく。
それほどの想いを彼が誰に向けるのか。その答えは、いつもの和やかな笑顔の中に隠されたままだ。
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