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SS置き場

Twitterで書いた二次創作SSを載せていくだけの場所。 夢も腐もある無法地帯。

眼球を愛でる話

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眼球を愛でる話



バベル君はエヴァ様の目を愛でそうだなぁ、と思って書いたSSです。

ほんのり観覧注意です。
■■■■■



「おにいちゃん、きす、させて?」
バベルは時々エヴァに対してとても甘えたになることがある。特にお互いに仕事の都合で中々一緒にいれなかった後は、その傾向が強かった。
26年という長すぎる歳月に隔てられていた孤独を埋め合わせるかのように、強く、強く、エヴァを求める。
そこにあるのはあくまでも兄弟愛や家族愛に近いものだ。子供が家族にねだるような、屈託のない愛。だからこそ、エヴァも彼の要求には応じていた。
バベルの唇が落ちてくるのは、額か、頬か、或いは瞼の上だ。少しだけ気恥ずかしくはあるが、触れるだけの優しいキスは温かくて、エヴァの心を幸福で満たしていた。
この日も何度も彼の唇が降ってきて、エヴァは目を閉じて、それを受け入れていた。どうやら、この日は瞼に触れる事が多いようだ。
「バベルよ、くすぐったぞ」
「あう、ごめんなさい」
執拗に瞼ばかりに口付けられて、流石にこそばゆくなってきあエヴァはやんわりと彼を止めた。それだけで、バベルの動きはあっさりと止まる。
エヴァがゆっくりと目を開くと、少しだけしょんぼりとしたバベルと目が合った。ステージに立っている時の姿からは想像できないくらいに悄気ている彼は、まるで体の大きな子供だ。
その様子が可愛らしくてエヴァはうっすらと微笑んで、その頭を撫でた。
「そんな顔をしないでくれ。嫌だったわけではないのだ。ただ、ずっと同じところに口付けられるとくすぐったくてな」
「おこってない?」
「何故怒らねばならぬのだ?我はお前からの口付けなら喜んで受けるぞ?」
エヴァは身を乗り出して、バベルの瞼に触れるだけのキスをする。急のことでバベルは反射的にギュッと目を閉じたが、すぐにふにゃりと微笑んだ。
「えへへ、おにいちゃんから、ちゅってされて、すごくうれしい」
「我もお前のその笑顔が見れて幸せだ」
「バベルもしあわせ。ふふっ、おそろいだね」
するりとバベルの腕がエヴァの背中に伸びてきて、彼を引き寄せる。その力に任せて、エヴァはバベルに身を委ねた。
「あのね、おにいちゃん。きょうはね、いつもとちがうところにも、ちゅってしたいな」
「ん?どこにするつもりなのだ?」
「えっとね……」
エヴァが顔をあげると、バベルの顔は至近距離まで迫っていた。小声で言葉を交わしただけで、互いの吐息が触れるくらいに近い。
自分と同じ綺麗な青色の瞳に真っ直ぐに見つめられて、エヴァは一瞬だけ呑まれるような感覚に陥った。
「バベル……?」
「おにいちゃん、そのままじっとしててね」
バベルの笑顔が近づいてくる。その唇の行く先を無意識に目で追っていたエヴァの視界は、ふと影に覆われた。
思わず目を閉じそうになる。だが、出来なかった。阻まれてしまった。
本来ならば何も触れるはずのない場所。眼球に温かくて柔らかな感触が広がり、その違和感に体が震えた。
痛みはない。少しピリッとする痺れと、異物感があるだけだった。
影はすぐに遠退いたから、あっという間のことだったのだろう。だが、エヴァにはとても長く感じられた。
「やっと、おにいちゃんのいちばんだいすきなところに、ちゅってできた」
唖然として固まっているエヴァとは真逆に、バベルは幸福そうにうっとりと目を細ていた。
純粋な笑みを携えている彼に悪気はないのだろう。ただ純粋にエヴァを愛でているのだろう。
それが異常な行動だとも気付かずに……。
子供とは時に無垢故に残酷なことをする。そして、それが酷なのだと気付いていない。今の彼は、それと全く同じだ。
「もっと、ふれたいなぁ」
「バベル、やめ……」
バベルの細くて長い指が迫ってくる。
止めなければと焦る気持ちとは裏腹に、エヴァの唇は震えて上手く言葉を紡げないでいた。目を閉じたいのに、まるで釘付けにされてしまったかのように真っ直ぐに指先を見つめてしまう。
緊張で瞼が震える。瞬きすら出来ず、涙がうっすらとにじみ始める。
「ここを、さわれるのは、バベルだけがいいなぁ」
ひとりじめー、と楽しげな声が聞こえてくる。
直後、そっと指先が眼球に触れて、ゆっくりと輪郭を滑っていったのだった。
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