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SS置き場

Twitterで書いた二次創作SSを載せていくだけの場所。 夢も腐もある無法地帯。

バベル君にマフラーを贈ってもらう話

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バベル君にマフラーを贈ってもらう話

帰り支度をする最中に窓から外を眺めると、風に吹かれた木が激しく揺れていた。枝がしなり、葉がぞわざわと蠢いている様子からして、かなり強い風が吹いているのだろう。
天気予報では暫く冷たい風が吹き込むと言っていた。朝も凍えるような寒さだったけど、太陽の沈んだ今はもっと寒いかもしれない。そう思うと、外に出るのが憂鬱になって仕方がなかった。
コートを羽織って、手袋も付けて、マフラーも巻いて。出来る限りの防寒に努める。あとは急いで家に帰るだけだ。
そう思っていたのに
「あれは……」
学校のエントランスに人陰を見付けて、思わず足を止めてしまったのだった。
「バベルさん、こんなところでどうしたんですか?」
エントランスの出入口の側で一人で佇んでいたバベルさんは、私に気付くといつもの優しい笑顔を向けてくれた。見てるだけだ癒される笑顔。ステージに立っている姿からは想像できないくらい穏やかだけど、私からすればこっちが普段の彼だ。
バベルさんも帰るつもりだったみたいで、いつもの制服の上にコートを羽織って、鞄を肩にかけていた。
「バベルさんも今から帰るところだったんですか?」
「ううん。きみをまってたの」
「私を?」
「うん」
ニコリと笑みを崩さずに頷くバベルさんに、私は首を横に傾けた。バベルさんを待たせるような事に心当たりは全くなかった。
そのまま理由も分からないままに突っ立っていると、急に首元が軽くなった。首に巻いていたマフラーがほどけていくのが見えて、我に返る。
「あの、何をしてるんですか?」
「きみのまふらーをほどいてる」
「えっと…何の為に?」
私のマフラーをクルクルと手で巻き上げるバベル君に、私は戸惑うしかなかった。彼が予想外の行動をするのは今に始まったことではないけど、まだ慣れそうにはない。きっと何か目的があるんだろうけど、それもさっぱりだ。
仕方なくバベルさんが何をするのか様子を伺っていると、彼は私から没収したマフラーを側のベンチに置いて、ごそごそと自分の鞄の中をあさり始めた。
「バベルね、きみにプレゼントしたいものがあるの」
じゃーん!という言葉と共に鞄から引っ張り出されたのはマフラーだった。すごく綺麗な紫色の毛糸で編まれたそれは、何となくバベルさんのライブ衣装を連想させる。
なるほど。それで私からマフラーを奪ったのかと納得していると、再び首回りが温かくなった。とても柔らかくて、優しい温もりが広がっていく。
「どう?ぽかぽかする?」
「はい。すごく、温かいです」
「よかった。がんばってつくったかいがあった」
「えっ……」
ふと、バベルさんが溢した言葉に耳を疑った。作った?これを、バベルさんが作った⁉
「バベルさん、編み物も出来るんですか!」
「うん。バベル、しゅげいはとくいだよ」
「裁縫だけかと思ってました」
「バベル、おさいほういがいもできる。すごい?」
「凄いです。凄すぎます」
手先が器用な事も、縫いぐるみや服が作れることも知っていたけれど、編み物が出来るのは初耳だった。本当に何でも出来て尊敬していまう。
しかも、私の為に作ってくれたんだと思うとものすごく嬉しかった。
「ありがとうございます。大切にしますね」
「これできみはおそとでもぽかぽかだね」
「そうですね。バベルさんのおかげでこの冬も乗り切れそうです」
嬉しそうなバベルさんにつられて、私も頬が緩んでいく。
きっと毛糸選びにもこだわってくれたんだろう。肌触りがすごく滑らかで気持ちがいい。
「あのね、まふらーのぷれぜんとにはいみがあるんだよ。きみはしってる?」
「マフラーを贈る意味ですか?」
贈られたマフラーの感触を堪能していたら、いきなり問を投げ掛けられた。生憎私はその答えを知らなかったし、予測も付きそうにない。だけどバベルさんは私が答えるのを待っている様子だった。
どうしよう。何て答えよう、と悩んでいると、目の前に影がかかった。
「こたえ、おしえてあげる」
バベルさんに至近距離で目を覗き込まれ、息を飲んだ。すごく綺麗な青い目に吸い込まれてしまいそうになる。それが何だか気まずくて視線を反らしてしまいそうになったけど、バベルさんに頬を両手で包まれてしまい、無理やり元に戻される。そのまま引き寄せられて、私の体はバベルさんの腕の中にすっぽりとおさまってしまった。
「こたえはね……」
優しい声色が降ってくる。心地のいい雨みたいにしみわたるその声に耳を傾けていると、そっと答えが告げられた。
「こんやは、きみと、いっしょにいたい」
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