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SS置き場

Twitterで書いた二次創作SSを載せていくだけの場所。 夢も腐もある無法地帯。

バベル君とホワイトデーを過ごす夢SS

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バベル君とホワイトデーを過ごす夢SS

温かくて柔らかな唇と冷たくて固いチョコレート。正反対の感覚は、トロリとした甘さとなって混ざりあっていく。燃え上がるような体温にさらされたチョコレートが完全に蕩けきるまで、時間はかからなかった。
「ぷっ…はぁ……ちょこれーと、もうなくなっちゃった」
甘ったるい息苦しさに頭がぼんやりする。うっすらと浮かんだ涙のせいでぼやける視界の向こうで、バベルさんは物足りない顔をしているようだった。
今日はホワイトデー。それにちなんだイベントなのか、イタズラなのか。それを判断することは出来なかったけど、異様な空間に迷い込んだことだけは理解していた。
今、私とバベルさんがいるのは壁も床も天井も真っ白な部屋。見覚えのない部屋に嫌な予感がして慌てて外に出ようとしたけど扉はなくなっていて、代わりに現れたのは小さなテーブルだった。そこには美味しそうなチョコレートがハート型の器に5個乗せられていて、隣には『全て口移しで食べさせないとこの部屋からは出られない』と書かれたメモが置かれていた。
たまに創作で見る『~しないと出られない部屋』を彷彿とさせる雰囲気に、僅かな不安が過る。だけどバベルさんはあまり動じてはいなかったようで、じーっとメモ書きに視線を落としていた。そしてほんの少しだけ何が考えたそぶりを見せたかと思うと、迷わずにチョコレートを一つつまみ上げたのだった。
「このちょこれーと、おいしいね」
よく分からない状況で頭が混乱しているのに、いきなり口付けられて、しかも蕩けたチョコレートまで流し込まれて、私の思考はめちゃくちゃだった。
「ねぇ、だいじょうぶ?もしかして、いやだった?」
それでも辛うじてバベルさんが何を言っているのかを理解することは出来て、私は首を横に振る。得たいの知れない指示に従いたくはなかったけど、他になす術もないし、何よりバベルさんにキスされて嫌なわけがなかった。
「ほんとうに?」
次は頷く。すると、微かに不安を浮かべていたバベルさんは笑顔を取り戻した。
「じゃあ、もういちどしてもいい?」
しかもそう尋ねるのとほぼ同時に新しいチョコレートに手を伸ばされていた。つまみ上げられたチョコレートはあっという間にバベルさんの口の中に消えていく。
その様子を眺めていると、私の頬にそっと手が寄せられた。触れた指先がとてつもなく熱い。もしかしたら私が熱いだけなのかもしれないけど、触れられた所からチョコレートみたいに溶けてしまいそうに思えた。
きっとキスされたらもっと熱くなる。間違いなくさっきよりも……。今でこれだけ意識が蕩けてしまいそうなのに、次がきたらどうなってしまうのか。そんな不安と期待に応えるように、再び甘い口付けが降ってきた。
「っは…んん……」
同じチョコレートの筈なのにさっきよりもずっと甘い。そして、チョコレートが溶けてなくなってしまうまでの時間も早かった。
それが何だか名残惜しくて、チョコレートがなくなってからもバベルさんを舌で追ってしまいそうになる。
それはバベルさんも同じだったのか、完全にチョコレートがなくなってからも、しばらく離してはもらえなかった。
思わず閉じてしまっていた目を開くとバベルさんと目が合った。いつもの柔らかな目差しとは違う、真剣で鋭さのある目。時折見せる男性的なその目にドキリと心臓が跳ね上がった。
視線が交わった直後、バベルさんの目に笑みが浮かびさらに深く口付けられて、背筋にゾクゾクと心地のいい痺れが駆け抜けた。
「っはぁ……っはぁ………」
2回のキスの終わり。それと同時に腰が抜けてしまったらしく、私はその場にへたりこんでしまった。
「わっ、だいじょうぶ?」
「大丈夫ですよ。力が抜けちゃっただけなので………」
「そっか」
私を追うように、バベルさんは膝を曲げる。
「ねぇ、バベルのきすはきもちよかったから?」
「えっ?」
「きもちよすぎたから、こしがぬけちゃったの?もしそうだったら、うれしいな」
私と同じ高さになった視線の奥に、キラキラとした純粋な輝きとユラユラと揺らめく妖しげな炎が混在して見えるのは気のせいだろう。表情自体はニコニコとしているのに、決して私を逃がすつもりのない獰猛さをありありと感じた。
「ねぇ、どうだったのかバベルにおしえて?」
「それは……」
「いってくれないの?」
「えっと……」
「もしかして、まだわからない?」
どう返答しようか困っていると、軽く肩を押された。それだけで私の体は簡単にバランスを崩してしまった。背中に床の冷たさが広がっていく。続いて感じたのは腹部の重み。そして人肌の温もり。さっきまでしゃがんでいたバベルさんに馬乗りされたことに気付き、息を飲んだ。
「えっ、なっ、バベルさん!何するんですか⁉」
「ちょっとだまって」
さっきまでのキスに比べたらとても軽いキスが落ちてくる。それでも私を黙らせるには十分過ぎた。混乱と共に溢れでようとする言葉を飲み込んだ私の頭を、バベルさんに、いいこ、いいこ、と撫で下ろされる。
「つぎはちゃんと、きみをきもちよくしてあげるね」
しばらく私を撫で続けたバベルさんは、そう囁くやいなや、チョコレートを2つを手に取ると一気に口に放り込んだ。あまり大きなチョコレートではなかったけど、2つ同時に食べるのは無理があったみたいだ。
咀嚼する度に口が開いて、パキパキとチョコレートの砕ける音が聞こえてくる。その音は次第に粘性を帯びていって、唾液と溶けたチョコレートが混ざり、舌の上で弾ける音へと変わっていった。
ただチョコレートを食べているだけなのに、吟味する唇が、時々見える舌が、とても妖艶に映って、私はただ黙ってその様子に見とれていることしか出来なかった。
欲しい。そんな思いが沸々と込み上げてきて、ゴクリと喉が鳴った。それを聞き逃さなかったバベルさんは、唇に笑みを刻む。そして、そのまま体をこちらに向けて屈めてきた。
ゆっくりと、唇が重なる。
「んっ……」
待ち望んでいた甘みに舌が痺れる。まるでアルコールでも入っているのかと錯覚してしまうくらいに頭がクラクラして、熱いキスに酩酊しそうになる。
どんどんと力が抜け落ちていく体は、いつの間にかバベルさんに包み込まれていた。全身にバベルさんの温かさが広がって、混ざりあって、自分が分からなくなってしまいそうになる。
「っふふ、きみのかお、すごくとろとろ。ちょこれーとみたい」
ゆっくりと流れ込んでくるチョコレートを全部飲みほしてからも、抱きしめられたままだった。そのまま優しい余韻に浸っていると、さっきと同じ問いを投げ掛けられた。
「どう?こんどはちゃんときもちよかった?」
「…………はい」
「よかった。それじゃあ、もっときもちよくなろう」
また、バベルさんの顔が近づいてくる。ふと視界の端に入ったテーブルには、チョコレートが一つだけ残ったままになっていた。
「バベルさん、チョコレートは……」
「つぎは、ちょこれーとはおあずけです。そのかわりに、バベルだけをたくさんあじわって?」
返事をするまもなく、キスの波が押し寄せる。あっという間に溺れてしまった私は、そのままバベルさんから与えられる甘ったるい心地よさにどっぷりと沈んでいった。不思議だ。チョコレートは含まれていない筈なのに、これまでのキスで一番甘い味がした。
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