仕事の休憩中、パタパタと足音が近付いてきた。ふと、頭上にかかった大きな影が誰なのかを物語る。
「バベルさん、どうしたんですか?」
声をかけられるよりも先に振り向くと、バベルさんは目を丸くしていた。
きっとリハが終わった足でそのまま来たのだろう。彼の服はホワイトデーイベントの衣装のままだった。
「すごーい、よくバベルだってわかったね」
キラキラと目を輝かせるバベルさんの笑顔が眩しい。つられて私もついつい笑ってしまった。
「ところで今回はどうしたんですか?」
「えっとね、あなたにおとどけものをもってきたよ」
そう言うと、バベルさんはショルダーバッグから一つの手紙を取り出した。ハート型をしたそれは、仕事で使うものとは異なるデザインをしていた。
「これは……」
「バベルからのらぶれたーです」
はい、と差し出されたそれを反射的に受け取る。裏返すと自分の宛名が可愛い字で書かれていた。
「私に、ですか?」
「うん。うけとってくれる?」
「もちろんです!」
「ありがとう。それじゃあ、もうひとつ」
手渡された手紙を見下ろしていると、不意に顎を掬われた。
「らぶれたーにつづりきれなかっただいすきのきもちもうけとって?」
頬に仄かな温もりを感じたのは、すぐ後のことだ。