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SS置き場

Twitterで書いた二次創作SSを載せていくだけの場所。 夢も腐もある無法地帯。

写真加工アプリの話

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写真加工アプリの話

部屋に入るなり眩しいフラッシュと、シャッター音に襲われた。どうやら、写真を撮られたらしい。
「おい、人の写真を勝手に撮るな!」
黒羽はあからさまに嫌そうな顔をした。だが全く二人は反省していないようで、朔空はニヤニヤ、バベルはニコニコしていた。しかも黒羽のお咎めに耳も貸さず、さっき撮った写真を確認し始めた始末だ。
「こら、無視するな!」
せめて一言くらい詫びるべきではないか。そんな苛立ちが募っていく。
黒羽は大股で二人の目の前まで近づくと、彼らが覗いているスマホを乱暴に取り上げた。
「ちょっと、いきなり何するの!」
「それは俺の台詞だ」
すぐさま朔空がスマホを取り返そうと立ち上がる。黒羽は咄嗟に身を引いてそれを阻止した。
「くろ、びっくりさせてごめんなさい。でも、これにはふかーいわけがあるのです」
更にバベルまで追ってきて、彼の長い腕に黒羽は簡単に捕まってしまった。その隙に朔空にスマホを取られてしまい、不機嫌なまま二人を睨む。
「深い訳だと?」
どうせろくな事ではないだろう。そんな疑いの目を向けるが、バベルは至って真剣な面立ちをしていた。
「さいきんのしゃしんあぷりはすごい。かこうしゃしんがかんたんにつくれるのです」
「だったらどうしたんだ?」
「さっき、バベルはとってもかわいくしてもらったの。だから、つぎはくろのばん」
「はっ?」
写真加工。可愛くしてもらった。次は黒の番。
バベルの言葉に黒羽は眉を潜めた。言っている意味がよく分からないが、嫌な予感しかしなかった。
ふと朔空を見ると、ポチポチとスマホをいじっている。最初は楽しそうな顔を浮かべていたから良からぬことをしているのだろうと思っていたが、その顔はどんどんと真顔に戻っていった。
「何これ、ありえないんだけど……」
「さく、どうしたの?」
「黒の写真、ほとんど変わらないんだけど……」
朔空は面白くなさげにスマホの画面を見せてきた。バベルが興味津々にそれを見下ろす。そして、わっと目を見開いた。
「すごーい、ほんとうにほとんどかわってないね。バベルもさくもすごくかわいくなったのに」
「どういう事だ?」
「あのね、さくがしゃしんにとったひとをおんなのこっぽくするあぷりをいれたの。それで、さっきバベルとさくでやってみたら、すごくかわいくへんしんしたの。ほら!」
バベルは自分のスマホを起動させて、黒羽に差し出してきた。そこにはバベルの面影があるものの、明らかに女性の顔をした写真が映っていた。
「これはお前なのか?」
「うん。それで、こっちがくろ」
あまり見たくはなかったが、バベルに自分の写真を突きつけられて、黒羽の目に嫌でも入ってしまった。しかし、そこには普段と変わらない自分が映っているだけだった。
「何回も加工ボタンを押したのに全然変わらなかったんだよね」
「ふんっ、アプリごときで俺の顔を変えられるわけがないだろう」
「いやいや、俺もバベルも結構変わったんだよ」
「だったらどうした?」
不満げな朔空に鼻で笑ってやる。しかし、黒羽の余裕は次のバベルの一言で崩れ去った。
「くろのおかおは、これいじょうあぷりでかえられないくらいかわいいってことなのかな」
「はっ?」
「あー、なるほどね。それなら納得かな。黒ってば女の子みたいな可愛い顔してるもんねぇ」
「なっ、そんなわけがないだろう!」
「そんなことあるから、この結果なんでしょ」
「ふふっ、くろはとってもかわいい」
「可愛くない!!」
ニヤニヤ。ニコニコ。二人はまた最初の楽しげな笑みを浮かべて黒羽を見る。その視線にゾッと背筋を凍らせた黒羽は逃げるように後ずさる。しかし、すぐにバベルに捕まってしまい、くしゃくしゃと頭を撫でられた。
「くろはかわいい!」
「うん、可愛い、可愛い」
バベルは本気で言っていそうだが、朔空は明らかに便乗して楽しんでいるのが目に見えて分かる。『可愛い』の言葉の嵐の中、黒羽はバベルにもみくちゃにされながらぐったりと項垂れた。
「勘弁してくれ」
黒羽は小さくぼやく。しかし、その声は二人にはも届かなかった。
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