Twitterで書いた二次創作SSを載せていくだけの場所。 夢も腐もある無法地帯。
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アイドルという職業は多忙だ。いや、厳密にはアイドルの途中段階なんだが、それでもプライベートの時間を作るのは容易ではない。
それが誰かと予定を合わせようものなら、尚更だ。
現にやっとのことで調整した休みだというのに、外は生憎の雨。しかも台風だ。
「なぁに不貞腐れてやがる」
「別に不貞腐れてなどいない。お前の腕が邪魔なだけだ」
「悪いなぁ、俺はお前よりデカいからやり場に困るんだよ」
暗い部屋で、テレビの明かりだけがぼんやりと光を伸ばしている。そこに映される動物ドキュメンタリー映画を、轟一誠と何となく眺めていた。
いや、見ているのは俺だけだ。やつはさっきから俺にちょっかいばかりかけて遊んでいる。テレビなんて全く見ていない。
「おい、テレビを見ないなら切れ。電気代が勿体ないだろ」
「あ?何だよ、退屈しねぇようにつけてやったのによぉ?」
「これは赤羽根双海が置いていったDVDだろ。何故お前の家まで来てナマケモノの映像を延々と見せられなくてはならないんだ」
「仕方がねぇだろ。これくらいしか時間を潰すものがねぇんだよ」
轟一誠は全く悪びれた様子を見せない。それどころか、笑いだす始末だ。
折角の休みだというのに、こいつはこんな過ごし方でいいのか?俺には理解できない。
「何か言いたげな顔してるな」
「お前のせいだろう」
「そうかよ。 それならお前は何がしたいのか教えてくれよ」
轟一誠の腕が腰に回される。いい加減にしてほしくて振りほどこうとしたが、やつの腕はビクリとも動かなかった。
横目で見上げると、挑発するような目と視線が重なった。
「なぁ、お前は俺と何がしたいんだ?」
さっきよりも一段と低い声に、鋭い視線に、一瞬だけ気圧されそうになる。すぐに我に返ったが、一度乱れた鼓動はしばらく落ち着きそうになかった。
それを悟られるのも癪だったから、俺もやつを睨み返す。恐らくこいつには意味のない抵抗かもしれないが、しおらしくしてやるつもりなど更々ない。
「俺はお前をもっと見ていたい。お前と、今ここでしか出来ないことがしたい。それじゃ不満か?」
「いいや、悪くねぇ」
轟一誠が嗤う。暗がりの闇のせいで、やつの目がいつもより一層煌めいて見えた。
だが、やつの顔を拝んでいられるのも束の間だった。視野が回り、心もとない光を放つ照明が灯る天井が現れる。
「お前から煽ったんだ。楽しませてくれよ?」
「俺をその気にさせられたら考えてやる」
「生意気なこと言ってくれるじゃねぇか。優しくしてやらねぇから覚悟しろ。あぁそうだ、ちょっとくらいなら鳴いてもいいぜ?この雨だ、お前の声も洗い流してくれるだろうよ」
再び俺の視野を埋め尽くした奴は、危険な光を孕んだ目をしていた。